魔法少女のステッキ

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【感想】 『Q&A』 恩田陸:真相解明に人間の闇が見え隠れする

『Q&A』恩田陸 あらすじと感想

〈あらすじ〉

 都市郊外の大型商業施設において重大死傷事故が発生した。死者69名、負傷者116名、未だ原因を特定できずーーー多数の被害者、目撃者が招喚されるが、ことごこく食い違う証言。防犯カメラに写っていたのは何か?異臭は?ぬいぐるみを引きずりながら歩く少女の存在は?そもそも本当に事故なのか?

 

〈感想・ネタバレ有り〉

 これは、面白い!こういう書き方って「対話体形式」って言うんですよね。

 登場人物たちの会話のみから事件をひも解いていくので、まるで自分がその場に同席している第三者のような気分になります。

 

 『M』という大型商業施設で起こった事故。その被害者たちにインタビューを行うが誰からも決定的な原因を聞くことが出来なかった。

 事故当時に居た階も違う、そこなのにパニックになった時刻はほぼ同じ。監視カメラにもそう記録が残っている。

 何か事故が起きる原因があったとして、これほど同時にパニックが伝染するだろうか。もっとタイムラグがあるものではないだろうか。

 そもそもパニックになる原因がどうしても見つからない。

 気味が悪いーこれほど死傷者が多数存在する大きな事故なのに、理由がないことが。

奇跡の少女は宗教団体の象徴へ…

 これほど大きな事故にも関わらず、無傷で助かった少女がいる。パニックの中、親と離れてしまった少女。助かった時に、手には血のついたぬいぐるみが。ぬいぐるみは少女のモノではない。ぬいぐるみの血も彼女のものではない。結局誰のモノか明らかにならなかった。

 

 奇跡的に助かった少女は、事故の被害者や関係者から拝まれるような存在となっていく。

 

 これって人間の心理なのかな。まるで少女が特別な存在だから助かったように感じちゃうの。原因が明らかにならないこともそれを助長しているんだろうな。

 

事故の原因は結局わからず?

 原因がわからないと多くの説が存在する。毒ガス説や。政府陰謀説など。

原因は結局明らかにされていない。

 

 だが、こういう説が広まることで事故が2次、3次と広がっていくのだ。

 例えば『政府陰謀説』が広まると、政治家に対する国民の不信感が募る。説が正しいか間違っているかは関係ない。政府関係者はこの説を消そうと邁進する。その際にまた事件が起きてしまうこともあるのだ。

 

 

 大きな事件の引き金ってどこに転がっているかわからない。事故現場って第三者から見たら非日常だけど、当事者からすると生活圏で日常なわけだし。

 

 たとえばデパートで「逃げろ!」って叫ばれて人が走ってきたら、その波に流されず冷静にいられるだろうか。そう考えると集団心理って怖い。

のちにインタビューで「何があったんですか?」って聞かれても「わからない。周りがパニックで私も…」としか言えない気がする。

 

 あと神様・仏様の存在ってよくできてる。日本人の気質にぴったりだなって思った。大きな事故に巻き込まれて、助かった場合「良かった!」じゃなくて「神様・仏様が守ってくれた、運が良かった」って思うことで、死人(や遺族)に対して生き残った罪悪感を薄めているとか。

 謙虚であることが美徳な日本人は、こういうことが起こった時に、まっさきに宗教にはまっちゃうんだろうなと感じた。

 

 人間の弱い部分がところどころに見え隠れして、印象としては灰暗いんだけど、そこがまた共感性が高くて、怖いもの見たさでどんどん読んでしまう作品でした。