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【感想】 『残火』 西村健:信念を貫く男の生き様がここにあり!

『残火』西村健 あらすじと感想

〈あらすじ〉

 白昼堂々、議員会館から盗み出された闇献金一億円。犯人は伝説の極道”人斬り秀”こと花田秀次。極道から足を洗った花田はなぜ一億円を盗み、どこへ行く?

 闇献金にからむ議員や暴力団、そして警察が彼を追う。そこには命を懸けた壮大な計画があった。

 講談社100周年書き下ろし&日本冒険小説協会大賞受賞作

 

〈感想・ネタバレ有り〉

 警察OBの久能、とある会社の社長・矢村、そして一億円強奪犯の花田

 きっと読む人によって、この作品の主人公は変わってくるだろう。私は最初は久能を物語の中心において読んでいたが、最後は花田が中心に居座っていた。

 

 この花田という男、元極道の人間で、組織の中でも信念があるというか、一本筋の通った男であった。

 時はバブル期、極道の世界も例にもれず、金に溺れて行った。「人は金より人情なり」という花田はこの時に極道の道から抜けるのだった。

 

 そんな花田が一億円を盗んだのだ。お金に困ったからという理由は考えられないだろう、なんてったって花田なのだから。一体何のために…?

 ここから警察サイドによる花田の捜索・追跡と、目的を達するまで捕まるわけにはいかない花田の逃走が始まる。

 

生き様ってやっぱり大事だと思わされる

 極道の道にはいたが、人を貶めるようなことをしてこなかった花田。だからこそ久能たちに「なんでこんなことをしたんだ?」と思わせることができた。

 

 一方で矢村も実は元極道なのである。バブル期に得た多額の金で会社を作った。その会社は議員と極道とずぶずぶの関係で、クリーンとは言い難い。

 一億円が盗まれたと報道されて闇献金の存在が明らかになっては困ると彼も花田を追いかける。

 

 花田の逃走を手助けてくれた”ネズミ”という男がいる。実は彼は矢村の手下だったのだ。しかし最終的には矢村を裏切り自害する。

 

 一億円を盗んだ犯人であるのに、読めば読むほど、その人柄に感心せずにはいられない。

花田の目的とは…?

 バブル期に極道の世界も金にまみれた世界にした人物がいる。大場だ。

 花田は大場が煽ったことで極道の世界が金銭第一主義になったことを、ずっと憎んでいた。

 自分の命が絶える前に、大場を葬ることが自分のやらなきゃいけないことだと、そしてそれを世間が大きく報じるために一億円を盗んだのだ。

 

 花田にとって極道とは、闇の世界ではなく、お金などの誘惑に惑わされることのない誠実な世界だったんだな、と思う。そしてそんな世界に相応しかろうと真っ直ぐに生きようとする花田の生き様は格好よく思えた。

 大場を葬ることで、極道の世界をかつての様な一本真っ直ぐ筋が通った世界に戻したかったんだろうか…。