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魔法少女のステッキ

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【感想】 『大絵画展』望月諒子―芸術をめぐるミステリー

『大絵画展(だいかいがてん)』望月諒子 あらすじと感想 

大絵画展 (光文社文庫)

大絵画展 (光文社文庫)

 

 〈あらすじ〉

 ロンドンのオークションでゴッホ作「医師ガシェの肖像」を日本人が競り落とした。落札価格は約180億円。時は流れ、日本のバブルが弾け、借金で追いつめられた男女にある依頼が持ちかけられる。それは倉庫に眠る「ガシェの肖像」を盗んで欲しいというものだった・・・・・。

 

☆〈感想・ネタバレ有り〉

 第14回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した作品らしく、個人的にはその名にふさわしいと思えるくらい読み応えがあり、おもしろい作品だと思った。

 

 株の詐欺にあい多額の借金を負うことになった荘介と茜と城田の3人。荘介と茜は城田から「医師ガシェの肖像」の盗みの話を持ちかけられる…。

 

 3人の盗みのアクションのスピード感やドキドキ感がすごく楽しい。城田の行動に不信感を持つ場面もあって、3人は詐欺に遭っているので誰が味方で誰が敵なのか?と疑心暗鬼になりながら事が進んでいくのもハラハラしてたまらなかった。

 

 城田が絵画にすごく詳しくて、話の中で”絵画の価値の高騰”の経緯は芸術にうとい私でも感嘆してしまう内容だった。芸術って奥が深いなと思わされた。

 

 「医師ガシェの肖像」がたどった数奇な運命・それにより高騰した価値・”芸術”が軽視されていたであろう日本のバブル期・「芸術の価値」を見直そうとする人々。

よく小説でバブル期を題材にしたものを目にするけれど、芸術(絵画)の視点からアプローチしたものって初めてだったのですごく新鮮でした。

 絵画が担保になった時代があったというのもビックリだし、本当の価値がわからず年倍もの値段でやり取りされたことや、その後バブルが弾けて多くの絵には価値がないことが分かっても処分できずに保管されている絵画がたくさんあること…。本当に知らないことばかりだった。

 

 1枚の絵画をめぐる事件に巻き込まれた人々とその絵画の行方が綺麗に完結されていたので、読み手としても気持ちのいい作品でした。

『芸術(絵画)』がテーマとなっている作品なので「格好つけた作品だったらいやだな」と思っていたのですが、むしろ人間くさくてとても惹きこまれた作品でした。