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魔法少女のステッキ

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【感想】 『ユージニア』 恩田陸 最後もやっとすることを除けば読み応え抜群!

読書

『ユージニア』恩田陸 あらすじと感想 

ユージニア

ユージニア

 

 〈あらすじ〉

 「ねえ、あなたも最初に会った時に、犯人って分かるの?」こんな体験は初めてだが、俺は分かった。犯人はいま、俺の目の前にいる、この人物だ――――。

かつて街を悪夢で覆った、名家の大量毒殺事件。数十年を経て解き明かされてゆく、遺された者たちの思い。いったい誰がなぜ、無差別殺人を?

見落とされた「真実」を証言する関係者たちは、果たして真実を語っているのか?

 

〈感想・ネタバレ有り〉

 名家で起きた大量毒殺事件。犯人は「自分が犯人である」という遺書と共に遺体で発見された。名家とは関係の無い人物であったが、犯人が出たことにより事件は解決した、とされた。

 

「私、犯人はあの子だと思っているの」事件当時、小学生だった女性はこのように述べた。

「犯人は、今目の前にいるこの女だ」現場に駆け付けた警察官の男はこう感じた、と述べた。

 当事者たちから語られる真犯人像。だけど証拠が出てこない。事件の真実は何なのか。

 

「犯人はこの人だ(と確信している)」と読み始めてすぐに明記されるので、この人が犯人である証拠は?理由は一体何なのか?と読み手は真実の解明にのめりこんでいく。

物語の中盤までは、すごく面白い。

 だが、結局のところ真犯人像は曖昧にされている。「恩田陸の結末を読者にゆだねるスタイルが好きだ」という人もいるが、今回の作品は曖昧にすべきじゃ無いと個人的には思う。事件の真実を求めて読んでいるのに、そこがハッキリしないので、私は正直もやっとした。

 

 真犯人(とされる人物)の動機も良く分からなければ、犯人(とされた人物)が実行犯である、といったような記述もあって、事件の真相をつかむことができない。

 

 キーワードとして百日紅という花が出てくるが、これもイマイチ伏線になっているようで、そうでもないので、よくわからない。

 事件の真相を求めて気持ちのいいペースで読むことができるんですが、最終章で失速どころか「今まで読んできた内容すべて勘違いしているんじゃないか?」と不安になってしまうくらい、読んできた内容と結末が私の中でかみ合わないんです。

 

深い意味はない?作中に出てくる”非日常”の描写

 作中の中で、”事件当日にあった不可解なこと”の描写があります。

これは事件のカギになるぞ!とメモったのですが、のちに触れられることはなく、意味があったのかわかりません。

  • 持ち主不明の赤いミニカーが落ちていた。(その家では外で使わないのに、泥が付いていた)
  • 謎の女から「おかわりありませんか?」と電話がかかってきた。

 ミニカーについても、女についても、これ以上の言及はなかったと記憶しています。

この描写の意味はなんなんだろう?

 

 どこに書かれていたか忘れましたが

人は伝えるときに誇張や強調を無意識にしてしまうから「ノンフィクションなんて存在しない」

 とあったのをふと思い出しました。

 つまり、事件当事者たちが語ったことは、彼らにとっては真実でも、聞き手にとってはかなり歪曲した内容ということ、でしょうか?

 あるいは、当事者たちの語った内容(つまり記憶に強く残っていた部分)がたまたま事件の真相には関係なくて、かえって事件の真実の記憶を薄めてしまっている、とか?

 

 もしもう一度読む機会のある人は、”作中で何でもないことみたいにさらっと描写している部分を拾い集める”と、全く別の犯人像や真実が浮かびあがってくるのかもしれません。(あくまで私の想像なので、保障はできませんが)