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【感想】 『フィッシュストーリー』 伊坂幸太郎 強い想いはどこかで繋がるかもしれない。

『フィッシュストーリー』伊坂幸太郎 あらすじと感想

フィッシュストーリー (新潮文庫)

フィッシュストーリー (新潮文庫)

 

  最後のレコーディングに臨んだ、売れないロックバンド。「いい曲なんだよ。届けよ、誰かに」テープに記録された言葉は、未来に届いて世界を救う。時空をまたいでリンクした出来事が、胸のすくエンディングへと一閃に向かう瞠目の表題作ほか、伊坂ワールドの人気者・黒澤が大活躍の「サクリファイス」「ポテチ」など、変幻自在の筆致で繰り出される中篇四連打。爽快感溢れる作品集。

  • 動物園のエンジン
  • サクリファイス
  • フィッシュストーリー
  • ポテチ

 

☆〈感想・ネタバレ有り〉

 『動物園のエンジン』はデビューから1年後に初めて出された短篇だそうだ。

(ちなみにデビュー作は長篇『オーデュポンの祈り』である)

 

 私は伊坂作品を何作か読んでいるが、伊坂幸太郎独特の話の進行がデビュー初期から現在に至るまで一貫されていることに驚いた。

 呼称を曖昧にしたり、時系列がグニャグニャになっていることによって、伊坂作品は読者をミスリードする。

 そして読み進め、ミスリードされたことに気が付いた時、読者は「やられた!」という気持ちと、何とも言えない爽快感を感じる、と私は思う。

 

 私個人としては本作『フィッシュストーリー』は物足りなく、伊坂作品では『死神の精度』や『終末のフール』をオススメする。

 伊坂作品は日常系の物語よりも、ミステリー作品の方がテンポよく、且つ様々な伏線が生かされているな、と思う。

arasukkiri.hatenablog.com

 

 

 本作に収録されている『ポテチ』では「塩味」と「コンソメ味」の取り違えが”赤子の取り違え”の伏線となっているんだろうけど、あまり生かされていなかったように感じた。現になくても問題のない描写だった。

 登場人物が独創的で面白かっただけに、伏線がバシっとこなかったのがすごく残念だ。

 

 『フィッシュストーリー』とはこんな話だ。

 売れないバンドのある曲には謎の数秒の無音があった。この無音が存在する理由と、曲を作った時には考えられなかった”その無音”によって将来奇跡が起こるという話。

 話は『PK』に少し似ているのかな、と感じた。

 これ、話の順番(流れ)が良くないと思う。

「息子→バンド→親→女」の順番だったらもっと「なんで!?」って思いながら読んだと思うし、最後に「ああ、こうやって繋がっているのか」って思わず納得しただろうに。

 収録された順番でなければならない必要性を私は読み取ることが出来なかったんだけれど、なにか意味があったんだろうか?

☆ファンなら知っている!もうひとつの伊坂作品の楽しみ方

 伊坂幸太郎の作品を複数読んだことがある人はうすうす気が付いているかも知れないが、伊坂幸太郎の作品は(登場人物が生きてる)世界がリンクしているものが多い。

 例えば!

 『サクリファイス』と『ポテチ』にチョイ役で登場する黒澤は『ラッシュライフ』では主役級の活躍をするキャラクターだったりする。

 『動物園のエンジン』に名前だけ出てくる”伊藤”は『オーデュポンの祈り』では強盗犯で活躍(?)しているのだ。

 

 ある作品での登場人物の過去や未来を別作品で堪能できるのも、伊坂作品ならではの楽しみ方なのかもしれない。