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魔法少女のステッキ

好きなことを好きなだけ。

『恋愛嫌い』平安寿子 恋愛だけが幸せじゃない!

読書

『恋愛嫌い 平安寿子』 あらすじと感想

恋愛嫌い (集英社文庫)

恋愛嫌い (集英社文庫)

 

★〈あらすじ〉

 女の世界は恋の話題で溢れている。でも、なじめない人間だっている。恋愛願望がなく、感情に溺れられない29歳の喜世美。猫と同居し、ブログでだけ自分を解放できる26歳の翔子。勤続12年、次長の肩書きもあるベテランだが「前向き」が嫌いな35歳の鈴枝。男とつきあったことがないわけじゃないけれど、恋愛は苦手------ そんな女性たちの本音をリアルに軽やかに描き、明日へのエールをおくる小説集。

  • 恋が苦手で・・・
  • 一人で生きちゃ、ダメですか
  • 前向き嫌い
  • あきらめ上手
  • キャント・バイ・ミー・ラブ
  • 相利共生、希望します
  • 恋より愛を

 

★〈感想・ネタバレ有り〉

 「恋愛がしたくないわけじゃないんだけれど、毎日生きていたら恋愛から遠ざかっていて、かといって恋愛に積極的でもないし…。」という3人の女性のお話なんですが、共感できるところが多数!読んでいてとても興味深い本でした。

 

 女性の社会進出が言われるようになってから、結婚を選ばない女性は『仕事に生きる』女性として見られるようになった。しかしこれは真実なのだろうか?

 まるで女性の幸せは『結婚』『仕事』の2択からしか選べないみたいだ。本当はいろんな選択があっていいはずだと思う。しかし現実は「負け美女」という言葉があるくらいに女性と恋愛を切り離して考えるのは意外と難しいのかもしれない。

 

 本作に登場する三人の女性、喜世美・翔子・鈴枝の共通点は、独身・恋人なし・恋に重きを置いていないということだ。恋愛を否定しているわけじゃないし、出逢いがないわけでもない。ただそこまで恋愛に積極的になれない。

 背伸びをせず、自分らしく生きている。そんな彼女たちの本音が実に的を得ているのだ。

 

 『一人で生きちゃ、ダメですか』では翔子がとある大臣の「女性は産む機械」という発言に対してこんなことを述べている。

人口減少を本気で危惧しているのなら、人口を増やすために女性たちが進んで「産む機械」になるようなシステムを国策として作ればいいと思う。

 

妊娠可能年齢の女全員に、定期的に子作り休暇を与える。まとめて気持ちのいいリゾート地に送り込み、事前アンケート調査で選び出した「寝てみたい男のタイプ」を取り揃え、とっかえひっかえ、ひたすらやりまくっていただくのである。男に選ぶ権利はない。女が「産む機械」なら、男はしょせん、種馬でしょ。

 そして「産む機械」の役目は、孕んで産んだら終わり。育てる苦労は国がやる。

  なかなか過激な発言であるとは思うが、一般的にはどうとらえられるんだろうか?

私は翔子の意見も一理あるな、と思ったのだけれど。『女性は産む機械』は明らかに女性を下に見た発言なんだろうけど、産む・産まないの主導権というか決定権の優劣は明らかに女性にあるよね、とは感じた。

なによりビックリなのがこの「産む機械」発言が実際にあった発言ということ。この発言をした大臣の本当の意図はどこにあったんだろう。

 

 

 3人以外にも女性は出てくる。「結婚=女の幸せ」と考える女だったり、男をたらしこむのが頗る上手い女。現実にいる女性を見事に描写しているので、思わずカチンときてしまったのは仕方のないことだと思う。

 

 最後まで読むと、ガチガチに固められた価値観がすこし緩和される気がする。「幸せ」というものは他人に決められるものじゃない、ということを改めて実感させられた。自分らしく生きれることが「幸せ」なんだ、そんなメッセージのつまった作品だと思う。

 

 平安寿子さんの作品は、現代人の生き方を問うものが多いので、悩んでいる時に読むとすごく優しい気持ちになれます。本作と『パートタイム・パートナー』を読んでとても相性の良い作家さんだと思うので、他の作品にも挑戦してみたいです。