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魔法少女のステッキ

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思い出のとき修理します3 谷瑞恵 

読書

「思い出のとき修理します 3」谷瑞恵 あらすじと感想 

★<あらすじ>

 穏やかに交際を続ける明里と秀司。ある日「秀司の時計店を女が手伝っている」と教えられた明里は、店で骨董店の娘・郁実と出会う。東京での仕事を辞めて帰ってきたという彼女は、商店街のお祭り準備で秀司が不在がちの今だけ、店番をしているのだという。

 自分と境遇の似た彼女に共感を覚えつつも、秀司との関係に少しだけ不安を感じて…。

  • 星をさがす人
  • コスモス畑とからくり人形
  • 逆回りの時計
  • さよならカッコウの家

 

★<感想・ネタバレ有り>

 ついに第三弾まできました。読み終えた感じでは、まだ完結ではなさそう。太一の正体もシリーズ3作品目にしてまだ解明されず。”永久ミステリー”という結末だけは絶対に避けてほしいですね。明里が秀司に頼んだ時計もまだできてませんし。個人的には秀司の推理がだんだん探偵並みに鋭くなっているのが少し気になったかな。一応、ただの時計屋さんという設定は大切にしてほしい。

 

 本作のキーアイテムである時計。作中ではこの”時計”というものが時間を教えてくれる日用品という立ち位置ではなく、自分の人生に寄り添って時を刻む大切な伴侶のように描かれている。時計といっても腕時計だけでなく、懐中時計や鳩時計、逆回り時計、ニセモノのブランドの時計など様々だ。

 この時計が持ち主にとってどの様な存在であるのか、どういう理由があって大事にしていたのか、あるいは壊れてしまったのか、時計を通じて持ち主の思い出や感情を知るというのが本作の読みどころである。このシリーズを読むと一生モノの時計が欲しくなってくる。

 

 持ち主たちの時計を捨てることができない理由や、壊してしまった理由、大事にしていた理由に触れて、読者は切なくでも温かい、そんなノスタルジーな感情になるのである。

 さびれた商店街という舞台設定も重要だと私は思っていて、これが都会のデパートなどであったらこうも切ない気持ちにならなかったと思うし、過去に向き合う時間もそれほど魅力的に感じることができなかったと思う。都会に流れる時間を忙しないと感じているのは私だけではないと思う。

 

 この時計屋さんを訪れる人々の「思い出の修理」の手伝いを通して、明里と秀司自身も自分の過去に向き合い成長していく。そんな姿に読者は共感を寄せてしまうのだと思う。

 傷を抱えて生きることの生き辛さや、傷と真正面から向き合うことの恐怖と切なさ、そして大切さを教えてくれる本だと思う。

 

 個人的には文庫本でシリーズものはあまり好きではないので、次巻あたりでスッキリ完結して欲しいです。あと、今回の文庫本の裏表紙のあらすじ下手すぎませんかね?物語のメインテーマは恋愛関係のあれこれではなく、家族の在り方だと私は思いました。