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魔法少女のステッキ

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「思い出のとき 修理します 2」谷瑞恵 を読んで心温まる

思い出のとき修理します 2谷瑞恵 を読んだ感想と簡単なあらすじ

★〈あらすじ

 寂れた商店街の片隅に佇む、「おもいでの時 修理します」という不思議なプレートを飾った飯田時計店。店主の時計師・秀司と、彼の恋人で美容師の明里のもとを、傷ついた記憶を抱えた人たちが訪れる。あの日言えなかった言葉や、すれ違ってしまった思い―――――家族や恋人、大切な人との悲しい過去を修復できるとしたら?切なく温かく、心を癒す連作短編集。

  • きみのために鐘は鳴る
  • 赤いベリーの約束
  • 夢の化石
  • 未来を開く鍵

★〈感想・ネタバレ有〉

 「思い出のとき修理します」

arasukkiri.hatenablog.com

  これの続編になっています。本作から読んでも問題のない作りになっているんじゃないかなと思います。

 

 寂れた商店街に佇む時計屋さん。「おもいでの時 修理します」という不思議なプレートが飾られている。プレートに気付き、店を訪れる人たちは、みんな修復したい過去を抱えている。思い出の修理なんてできるものなのか。過去は変えられないじゃないか。でも、思い出を修理することが出来たら…。

 

 最初にズバっと言ってしまいますが、過去を別のモノに変えるなんてことはできません。本作はタイムトラベルがあるわけでもなければ、特殊能力がある、なんていった話ではないので。”思い出を修理する”とはどういうことなのか。その答えは、悲しい思い出の記憶を紐解いていって、隠れていた優しさや幸せを見つけることで、思い出が良いものへと修理されていく、ということなのです。

 

 

 

 『きみのために鐘は鳴る』では明里のもとへ明里の妹が訪ねてくる。二人は血が半分しか繋がっておらず、年も離れている、少し複雑な姉妹だ。妹はそんな姉に姉妹らしさを感じることが出来ずにいたが、たまたま居合わせた客の思い出の修理を通じて、姉の中にはきちんと自分との思い出があって、妹として自分が存在していることに気が付く。

 上の子はお世話をしたり遊んだりした思い出があるけれど、下の子は当時幼くて覚えていないというパターン、年の離れた”きょうだい”には有ることだと思うんですよね。

 ただ明里たちの場合は家庭環境が複雑だったためにこじれてしまったのかなと感じた。

 

 『未来を開く鍵』は妻に素直になれない夫とその妻、そんな夫婦のお話である。この夫がザ・昭和の亭主関白で奥さんに対する態度がなかなか冷たい。けれど本当は「感謝している」「苦労かけた」という気持ちを持っていて、それが素直に言えず冷たくなってしまう。年を取った堅物をイメージしてもらえれば伝わるのではないだろうか。

 とある事件によって妻の記憶が抜け落ちてしまうことをきっかけに素直な気持ちを伝えることが出来る。「あたしあなたのお嫁さんになったんですね」という言葉と「悪かったな結婚式もできなくて」という夫の言葉には思わず泣きそうになってしまった。この奥さんにとっては『自分を妻として認めてくれている』というのは何よりも嬉しことだと思う。

 

「そっくり同じ時計が世の中にいくつあっても、自分に馴染んだ時計はもう唯一無二のもの。かすかな音の違い、竜頭のなめらかな動きかた、そんな小さな癖のようなものがその時計にしかない個性に思えて情がわきます。」 (P.229)

 本作の中で時計はただのモノではなく、人の思い出に寄り添うような、まるで見守ってくれているような、優しさをもったものとして描かれています。

 この本を読むと不思議と時計に愛着が湧いてきます。私の思い出にも寄り添ってほしいです。”自分に馴染んだ唯一無二の時計”になるように使っている時計を大切にしたくなりました。

 

 このシリーズにはまだ続きがあるようなので、秀司と明里の関係の変化や太一の正体なんかにも期待したいです。寂れた商店街の行く末も気になるのでシリーズ第三弾も読もうと思います。じわっと心が温かくなる作品なので次回作も楽しみです。