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魔法少女のステッキ

好きなことを好きなだけ。

読書ってこうでなくっちゃ!伊坂幸太郎の『ラッシュライフ』

 『ラッシュライフ 伊坂幸太郎』を読み終えたので感想を述べる。

ラッシュライフ (新潮文庫)

ラッシュライフ (新潮文庫)

 

★〈あらすじ〉

 泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場―――――。

並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今上がる。

 

★〈感想・ネタバレ有り〉

 『ラッシュライフ』は次の五つの視点で物語が進む。

  1. 拝金主義者の画商 戸田と、彼に振り回される新進の女性画家 志奈子
  2. 空き巣に入ったら必ず盗品のメモを残して被害者の心の軽減をはかる泥棒の黒澤
  3. 新興宗教の教祖にひかれている画家志望の河原崎と、指導役の塚本
  4. それぞれの配偶者を殺す計画を練る女性精神科医 京子とサッカー選手の青山
  5. 四十社連続不採用の目あっている失業者の豊田

 一見、関わることのないそれぞれの人生を生きている登場人物たちが意外なところで結びついたり、出逢ったり、影響を与えたりする。

 

 彼らの物語のスタートには共通点がある。「あなたの好きな日本語を教えてください」と書かれたプラカードを持つ白人女性とウロウロしている汚れた老犬に出会っているのだ。

 

 もうすでに読者を惑わせるワナが張られていたことに気付けたのは残り50ページをきってからだった。読み終えてから考えると、このワナに嵌ることが『ラッシュライフ』の世界に入り込む条件であったように感じる。

 

 これらの情報(彼らの共通点)から頭の中で作られる映像は、それぞれの登場人物たちが同日のほぼ同時刻同じ場所の存在していた、ということではないだろうか。

 しかしこれは真実だろうか?白人の女性が立っていたのは一日限りとは限らないし、老犬だってたまたまそこに居たのではなく住み着いてたのかもしれない。

結論を言ってしまうと彼らは同日に同じ場所に居たわけではないのだけれど。こういった頭で作った映像と物語にズレが生じるのが本の面白さだと思う。

 

 そして話を読み進めていくと

「死体がバラバラになる」という噂、バラバラ死体を運ぶ赤いキャップを被った青年、ハサミをチャキチャキいわせて老犬を切り刻もうとする女性、神様と崇める存在を解体してしまった河原崎、死体が急にバラバラになる現場に居合わせた京子と青山。

 このように「バラバラ死体」に関する話が進んでいく。「バラバラ死体」の犯人は赤いキャップの青年なんだろうか?それともハサミを持った女性か?あるいは神様を解体してしまったことが何かに繋がっているんだろうか?様々な疑念と憶測を読者に抱かせて話は進んでいく。

 

 これらの謎は読み終えるとスッと解決される。5つの物語が一つに重なる瞬間がとてもぞわぞわするので是非味わってほしいと思う。

 

 次は一番始めにしかけられているワナに注意して読んでみたいと思う。どんな違った視点になるのかすごく楽しみだ。