読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

魔法少女のステッキ

好きなことを好きなだけ。

エディプスの恋人 筒井康隆

読書

エディプスの恋人 筒井康隆

 

〈あらすじ〉

 ある日、少年の頭上でボールが割れた。音もなく、粉々になって―――それが異常のはじまりだった。強い”意志”の力に守られた少年の周囲に次つぎと不思議が起こる。その謎を解明しようと美しきテレパス七瀬は、いつしか少年と愛し合っていた。初めての恋に我を忘れた七瀬は、やがて自分も、あの”意志”の力に導かれていることに気付く。全宇宙を支配する母なる”宇宙”とは何か?

エディプスの恋人 (新潮文庫)

エディプスの恋人 (新潮文庫)

 

 

〈感想・ネタバレ有〉

 正直に言おう。良く分からなかった。一読するに”エディプス=智広”であるから”エディプスの恋人=火田七瀬”であることは理解できた。

 文中にたびたび「非現実感」という言葉が出てくるが、これが一体どのような世界観を指しているのかがわからなかったことも理解が及ばなかった要因の1つかもしれない。なぜその世界観が理解できなかったかというと、作中では能力者である七瀬が存在していることが現実として捉えられているからである。それを超える「非現実」を想像あるいは創造することが出来なかった。そもそもの前提である”七瀬が能力者である”とか”「意志」に守られた少年がいる”ことが既に「非現実」であるという考えが拭えなかったのである。

 

 智広を守る”意志”は彼の亡き母によるものであることが明らかになるのだが、実は彼女は神のような存在で宇宙や現実を作り上げる存在であるらしい。智広を守るために環境を作り上げたり、七瀬と恋愛をさせたりする。作中には「母の愛」なんて言葉で言われたりしているが、過保護すぎる、異常だという印象を受けた。

 彼の母が導いた道中にいることを悟った七瀬だが、彼女に逆らうことはできない。なぜならば、彼女は世界を形成する神の様な存在で、世界の構成要素の1つである七瀬は彼女の前では何の効力を持たないのが当然であるからだ。個人的にはこのあたりからすごくつまらなかった。為すがまま、問答無用、太刀打ちできない、ここから七瀬の能力者である設定が死んでしまった気がした。

 

 七瀬は”人の心を読む”能力を持っていて能力を隠しながら(活用はする)生きている。智広と出会い、彼の周囲との異常性から、彼は何らかの”意志”に守られているのだと彼女は知る。七瀬は能力を生かして”意志”の真実に近付いていく。このあたりまではすごく面白かったので、本当に最後が残念で仕方がない。ここまでは七瀬が能力者である設定も生きていて、物語に何が起こるんだというドキドキ感もあった。

 結局、七瀬が生かされている世界は現実なのか、非現実なのか。そもそもこれは重要なことなのか。神の様な力を持つ「彼女」はどう在りたかったのか。私には読み取ることが出来ず謎は深まるばかりであった。

 

 もしかすると本作には哲学的な解釈が含まれていたのかもしれない。私の知識の無さで理解に至らなかっただけなのかも。「こういう見方がある」という考えを持っている方がいれば、是非教えを乞いたい。