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魔法少女のステッキ

好きなことを好きなだけ。

木洩れ日に泳ぐ魚 恩田陸

読書

木洩れ日に泳ぐ魚 恩田陸


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あらすじ
 舞台はアパートの一室。別々の道を歩むことが決まった男女が最後の夜を徹し語り合う。初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿ー共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始める。濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは?不思議な胸騒ぎと開放感が満ちる傑作長編!


感想・ネタバレ有り
 具体的な登場人物はアキとヒロの2人だけ。話が進むと2人はある殺人事件に関与しているかもしれないことが明らかになる。互いが互いに疑惑を持っている。死んだ人と彼らの関係は?
 
 各章の終わり方が絶妙で含みを持っているのでついつい読み進めてしまう程面白かった。殺人事件の謎解きを通じて二人の過去も明らかになっていく。どうして共有しているはずの過去にズレが生じるのか。そこにあるのは思い込みだったり、人間心理だったり、実に些細なことであるのだと感じた。ただ、アキの幼少期の記憶、うっすらすぎないか?と疑問もある。

 結末として、二人は一緒にはいない選択を選ぶ。感性が同じだったり、気持ちが手に取るように分かったり、互いが互いを運命だと思っているからこそ、あまりにも切ない結末だと感じる。最終章でアキが来ることのない明るい未来を想像しているのも、また切なさを助長していた。

 本作は二人の微妙な感情の変化だったり、仕草の描写がとてもうまいと思う。アキがヒロに関心をなくすシーンなんかはすごく冷たい雰囲気が伝わってきた。激しいシーンが特にあるわけではないのにスルスルと読むことができるのは、こういった二人の感情の揺れ動きの細かさあってのものだと思う。今回はアキ寄りの視点で読んだので、次はヒロ視点で読んでみたいと思う。アキは禁忌があっても本当にヒロが好きだったと思うけれど、ヒロはどうだったんだろう。